アプカルル(魔術的賢者)の重要性 [聖書研究]

以下は、「メソポタミアからの知的伝承」佐々木光俊著)の記述の要約。+私の考え。


「アダパ物語」の主人公アダパは、エア(エンキ)と深い関係を持ち、エア(エンキ)の息子と呼ばれることもある。

アダパ(adapa)という名前は、adapu(賢い、という形容詞)から派生していると考えられ、固有名詞でない可能性がある。

アダパ(adapa)は、アプカルル(apkallu=半神的賢者・魔術師)の筆頭であり、オアンネス(=Uan)と同一視できる。

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魚のアプカルル(英文献ではFish-Apkallu)★ By WIKI
メソポタミア の伝説の生き物。発掘された彫像によると、頭から背中にかけて魚をかぶったような姿をしている(身体の前部が人間、後部が魚、という姿)。
神話 のなかでは、アプカルルは古の賢者であり、人々に知恵を授けたとされている。彫像は守護精霊として7体セットで用いられた。
アプカルルは、ヘレニズム 時代のバビロン神官ベロッソス が著した『バビロニア誌 』にオアンネス(Oannes)として現れる。オアンネスはペルシア湾 から上陸してきて、ごく短期間に人々に文明 を授けたといわれている。
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オアンネス(=Uan)は、「ビート・メ―セリ」という儀礼文書の中では、「天と地のプランを確立したアプカルル(apkallu)の筆頭として現れている。

エア(エンキ)神とマルドック神は、よく「神々の中のアプカルル」と表現される。

大洪水以前には、7名のアプカルルがいた。

① UーAnna 「天と地のプランを確立した

② UーAnne-dugga 「広い理解力を与えられた

③ Enmedugga 「良き運命が与えられた

④ Enmegalamma 「家で生まれた

⑤ Enmebulugga 草原で育った

⑥ An-Enlida 「エリドゥのエクソシスト除霊師)」

⑦ Utuabzu 「天に昇った

6番目のアプカルルである、An-Enlida 「エリドゥのエクソシスト除霊師)」に、アプカルルの本質的役割が顕れている。

即ち、アプカルルとは、除霊師・魔術師・呪術師としての賢者なのであった。 

アプカルル(apkallu=半神的賢者・魔術師)の筆頭であり、オアンネス(=Uan)と同一視できるアダパ(adapa)は、南風の翼をへし折るほどの呪力を持っていた。

この呪力は、エア(エンキ)神と共通する要素であり、南風の翼をへし折るとは、自然の秩序を破壊する程の創造的力を発揮することである。

だから、創造的力を代表するエア(エンキ)神と、自然の秩序力を代表するアヌ(エンリル)神は、対立する場合がある。

古代バビロニアでは、7名のアプカルルは、悪霊を除霊する力を持っていると信じられており、黄金の粉銀の粉を散布した粘土により、7体の魚型apkalluと、体の鳥型apkallu小像を造り、それを特定の場所に埋めたり、ベッドの脚に立てたりした。そうすることで、害悪を及ぼす悪霊を排除できると考えられたのである。

アッシリア王の周辺には、王個人や領土に生じる様々な変異を監視して、それに対処する専門的集団(魔術・呪術的賢者)がいた。バールー(肝臓占い師)・カルー(慰撫神官・歌手)・アーシプ(エクソシスト除霊師)・アスー(薬剤師)である。

これらの4つの専門的集団のうち、カルー(慰撫神官・おそらく去勢歌手?)・アーシプ(エクソシスト除霊師)・アスー(薬剤師)は、アプカルル(apkallu)の系統に連なる魔術・呪術的賢者と考えることができる。

アーシプ(エクソシスト除霊師)については、「エクソシスト便覧」と呼ばれる新アッシリア時代の文書が参考になる。この「エクソシスト便覧」には、アーシプ(エクソシスト除霊師)の仕事について、100近い文書目録が記載されている。

この「エクソシスト便覧」の中のSA・GIGAというタイトルの文書は、次のような内容を持つ。

病気の患者の元へ向かうアーシプが、途中で出会う動物により、その患者が快方に向かうか、反対に悪化するのかを占うことが出来る。たとえば、白い豚・黒い豚・白い牡牛・黒い牡牛などにより、患者の未来を予想する。

この様に、アプカルル(apkallu)の系統に連なる魔術・呪術的賢者であるアーシプの仕事は、呪術的な不合理なものであった。

ところで、1962年にLambertにより公表されたテキストには、古代メソポタミアの神話文学作品と、その著作者が、対応して書かれている。

その著作者は、ある文書の場合は、知恵の神エアに帰され、ある文書の場合は、アダパに帰されている。

そして、「エタナ物語」と「ギルガメシュ叙事詩」の著作者は、アプカルル(apkallu)に帰されている。と同時に、その著作者であるアプカルル(apkallu)は、「エクソシストmash-mash)」とされている。

以上の事柄から類推すれば、他のメソポタミアの神話文学作品(たとえばエヌマ・エリシュなど)も、・アーシプ(エクソシスト除霊師呪術師)的、アプカルル的文学作品として、理解されるべきであろう。

つまり、古代メソポタミアの神話文学作品は、まず第一に、エクソシスト的呪術魔術的意義目的)を持っていたのである。

 

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